「若者のテレビ離れ」は嘘だ
今どきの若者はテレビを買わない。車も買わない。これは当たり前だ。
そもそもなぜ買わないのか。「買わない」のではない。「買えない」のだ。常識的に考えて、一日一食しか食べられない貧乏人が、3万円のテレビを買うだろうか。買わないだろう。
同じ3万円ならスマートフォンを買うはずだ。そうすれば、仕事ができる。仕事が出来れば払った金額の元が取れる。テレビよりもスマートフォンを買うという行動の方が合理的だ。
自動車も同様に必要ない。なぜなら車という選択肢は、自転車・電車・レンタカー・タクシーに比べて高いからだ。自動車を買うという行動は合理的ではない。だから買わない。これが、若者のリアルな目線の一つだ。
もちろん田舎で自動車を使わずに生きていくことは不可能なので、田舎に引っ越したら買うかもしれない。あるいは自動車を買うことで、気分が上がって仕事が捗るなら買うかもしれない。ともかく、都会の若者にテレビと自動車は今のところ必要ない。
人間を観察する
「テレビなんて要らない」と言いながら、逆に自分が製品を作る立場になると。顧客の声を無視し、求められていない製品を作ってしまう。「何が求められているか」ではなく「何が作りたいか」にフォーカスしてしまう。
これは学生にありがちな失敗で、市場調査を怠ってしまうのがこの失敗の原因だ。市場調査といっても、お客さんに欲しいモノを聞いて回るわけではない。
簡単にプロトタイプを作ってから、ターゲットのお客さんに使ってもらう。そしてウケが良いか悪いか、お金を払ってもらえそうか、可能な限り早く確認した方が良い。何なら作るより先に契約を取って来られればさらに良い。
ともかく、プロダクトはいつもお客さんに受け入れられるわけではない。ただ、人間がお金を払って使う商品というのは大体決まっている。その分類を図1に示した。

この類型に分類できない商品は基本的に売れないと考えていい。狙っている類型の中で競合製品がないなら、需要はないと考えていい。
経済の主体は「人」なので、人の生態に即していない製品は売れない。製品が人の暮らしの、どの場面で使われるのか感じることが必要だ。これが人間を観察するという行為だ。
製品を作るという行為は簡単に見えて、すごく難しい。なぜなら、人間の暮らしというのは先人の凄まじい努力によって既に十分豊かになっているからだ。
しかし、すべてのソリューションが必要な人に届いているわけではない。技術の進歩で可能になったこともある。
基本的に人間の困っていることは過去に考え尽くされている。だから、既に市場にある製品から競合を見つけるのが近道だ。(ただし本当に稀だが、葉っぱビジネスのように誰も気付いていなかった困りごとが見つかることもある)
困ったら市場を見ること、人間を観察すること、これが製品を作るカギだと思う。