お客さんは原価を知らない

「お客さんは仕入れ値なんて分からないよ」

これは個人事業主として最初の仕事のとき、飲食店オーナーに教えてもらったことだ。

何回も仕事をして気付いた。お客さんにとって原価はどうでもいい。最も重要なことは「金額に対して効果が見合っているか」ということだ。

極端な話、原価率など1%でも構わない。参考まで、飲食店の原価率は35-45パーセント、逆にITの運用保守の原価は2パーセントだ。それでも、お客さんは飲食店を使うし、僕たちにITの運用保守を頼む。

この事実から分かるように、お客さんにとって原価(仕入れ値)は全く重要ではない


高いほど良い

僕たちの商品は課題を解決する手段に過ぎず、必ず代替案がある。お客さんは無数の選択肢の中から、最も良いと思ったものを選ぶ。安さは善で、高いことは悪なのだろうか。もちろんここで「単に安いことは良いことだ」という考えは間違いだ。僕も安さは善だと信じ込んでいた。

安いものには安い理由がある。値段と良さは比例することが多い。誰しも何となくは気付いているのではないか。その意味で目的によっては、1万円では高すぎる製品もあるし、逆もある。場合によっては「高い方が良い」お客様もいらっしゃる。これに関しては目から鱗が落ちる体験をした。

ある飲食店の営業で、アクセスポイントの製品を提案したときに、お客さんが「インフラ周りはとても重要だから、12万円ではなく、15万円払うよ。新品で提案して欲しい。」と言ってくれたことがあった。こちらの提案の3割増でも払うというのだ。

僕はこれまで安い中古品を最初に提案していた。だけど、このやり取りで、「より高い効果が必要だから、より高い製品が良い」と考えているお客様が存在することに気付かせていただいた。無論、値段に対して合理的な効果が得られることは前提に過ぎない。

お客様の課題が知りたいときは「どうしてプロダクトが欲しいのですか?」と聞かせて頂けばいい。そうすれば、たいてい現状の不満や課題はお客様に教えていただける。そもそも当社のような零細企業にお話をいただいた時点で、お客様は他の製品に満足していないからわざわざ当社までお越しくださった、ということは明白だ。

実はそういう他社から零(こぼ)れたニーズに対して、零細企業は有利なポジションにいる。他社で一度、ソリューションを体験したお客様は、的確に改善点を教えてくれるからだ。おまけに予算も明確だ。


利益(原価)に気付かせない

お客様は問題の解決策に対してお金を払っている。だから、原価がどうとか、そういうことは製品を選ぶ理由には全くなり得ない。お客様が、具体的にどれ位の温度感でソリューションを探しているのか。その温度感を探り、予算内でベストなソリューションを提案する。

ソリューションが「価格に対して十分か」「十分でないか」、またお客様が「価格とソリューションのバランスに納得してくれるか」は重要だ。利益とは「価格」と「ソリューション」の落差だ。この両者の適正なバランスを取るのが、利益を得るという行為だ。

生じる利益が適正ならお客様は全く原価を気にしない。むしろ、ソリューションの対価が適切なので利益に気が向かない。すなわち、究極の商売とは「値付けが自然すぎて、利益が出ていることに誰も気付かない」という極致だったのだ。利益に気を向かせてしまっているうちは、商売人としてまだまだだ(と自分では思っている)。

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