適度な権益は良いこと
世間では「既得権益」という言葉には良くない印象があります。しかし、適切な利潤はとても大切です。適切な利潤は事業者に対して、サービス改善への動機付けを与えます。
真逆のケースは過当競争です。例としては、PCの製造販売です。現代ではデスクトップパソコン(30万円)を1台組み上げて売っても、わずか1,000円しか利益が出ないと言われます。過度な競争は見えないところでサービス品質を低下させ、業界を衰退させます。
広告業界でもかなり苛烈な競争が繰り広げられています。Googleによってweb広告が広まり、ブログやアフィリエイトが誰でも出来るようになりました。その結果、たしかに有用な記事も増えましたが、アフィリエイト目的で粗製濫造された記事も多くなりました。今のweb広告単価はかつての100分の1と言われます。YouTubeの広告は2013年頃は1視聴1円でしたが、今では10視聴で1円だそうです。その分広告主が払う金額も大きくなっているのでかろうじて続いている仕組みです。
過当競争に陥ると、弱者は適正な利潤が確保できないので潰れます。僕は多くのITベンチャーが潰れる様子を近くで見てきました。そういう意味で、節度を持った権益は必要です。社会にある程度、こうした緩さがないと新規事業者も育ちません。
もちろん、官公庁(僕たちの税金を使って運営されている)との過度な癒着は良くないです。しかし、民間同士の取引の場合、取引先と良い関係を保つのは普通のことです。今後の長い付き合いのために、手心を加えてもらうこともあります。
社会は学生が考えるよりもずっと暖かく、弱者に優しい世界です。社会の全員が才能に溢れているわけではないので、そういう人だって最低限は生きていけるように支え合う必要があります。つまり、安定して仕事を確保できるよう、大企業ほど他社に働きかけなければいけません。
戦わない
既得権益が多い資本主義市場で、我々弱者はどうやって勝ち抜いていけば良いのでしょうか。答えは戦わないことです。むしろ、絶大な力を持つ年寄りを利用して助けてもらうべきです。
世の中に出ると、理不尽な人もいます。僕が塾講師のバイトをしていた頃、ちょっと一般的な感覚からずれた社員さんもいました。夜中に電話して「明日朝来れる?」。当日欠席は罰金、遅刻は給与返上など、世間一般の感覚からするとちょっとやり過ぎの感があります。
そんなとき、塾講師の先輩が教えてくれたのです。
「いいか、バカとは戦うな。アルバイトと社員でバトルしても、絶対に社員の方が勝つ。役職者が相手なら絶対に向こうの方が正しいということになってしまう。」
「それよりも、バカは利用しろ。相手の論理を見抜き、どういう利害で動くのか、どういう考え方なのかを徹底的に聞いて分析するんだ。自分達に有利なように動いてもらうんだ。」
僕はそれを聞いて妙に納得しました。その先輩は6年目のベテランだったのですが、その先輩の周りだけ妙に都合良くルールが変わっていたからです。理不尽な社員さんとは戦わず、上手く相手を利用していたのです。
年寄りに聞いてみる
大企業や年寄りは僕たちよりも遥かに強く、ずっと多くの人脈と資源・技術を持っています。僕たちは若者であるという武器を最大限活用して、老人に教えを請うべきです。助けを求め、手が届く範囲で利用できるものはなんでも使うのです。
こういう話をすると「そういう媚びるようなやり方はちょっと・・・」という人がいます。
年寄りに教えを請う行為はズルでも何でもありません。むしろ若者が頭を下げて聞きに来れば、年配の方は喜んで教えてくれます。年配だから、若者だからということはありません。聞く相手は話の通じる年配の方なら良いのです。
若者というのは傲慢で、自分でなんでもできると思っている節があります。僕もそうです。1人で何でもできると考えていましたし、今も思っているのかもしれません。でも、それは間違いです。これは最近、3つ年上の経営者に教えてもらったことです。
聞いてみるという行為を理解していない若者が多いので、これはチャンスなのかもしれません。
年配の方も同じ人間ですから、以下のことを守ればあとは概ね普通に接すれば大丈夫です。
・言葉遣いを守ること
・約束を守ること
・ちゃんと敬うこと
敬意を払いましょう。教えていただいたら「ありがとうございます」。飲みの約束をすれば、大抵ご飯を奢って頂くことになるので手土産を持って行きます。学生は貧乏なので、安いお菓子でも許してくれます。自分で選んで持ってきたお菓子だということが大事なのです。
あとは言葉遣いには気をつけましょう。相槌は「うん」ではなく「はい」です。僕がむかし塾講師のアルバイトをしていた頃、年上の女性の先輩に「うん」と相槌を打っていたら陰で足を引っ張られました。
それから約束は守りましょう。時間に遅刻するなら、必ず一報入れます。僕がむかし塾講師のアルバイトをしていた時、遅刻したときに社員さんには謝って、本部長に謝らないでいたら後で大変な不利益を被りました。
ただ、それさえ守ればあとは普通の人間と同じです。同級生・目下との会話と何も変わりません。年上だからといって緊張する必要もありません。普通に接すれば良いのです。
年寄りの人脈を活かす
年配の方々もやはりみんな活躍したいと思っているものだと思います(もちろん若者がそうでないように、年配の方でそうではない方もいます)。そういうところに、野心を持ったアツい若者が行ってみれば、喜んで色々教えてくれます。
飲みの席なら、口を滑らせて取引先の名前や知人の名前が出てくることもあります。酒の席をきっかけに商談が広がったこともありました。こうやって年配の方の知恵と人脈は、どんどん活かすべきです。
有益な知識や人脈を持っている人物がいて、どうしても会社に来てほしいくらい優秀な人なら、口説いて会社に来てもらったら良いと思います。
年配の方に来て頂く場合、お金は当然それなりに必要です。しかし、お金さえ用意できれば、後は口説くだけです。実際に人材を口説くという行動まで実行する人間は、ほんの僅かしかいません。どうしても来てほしい人材がいれば、拝み倒してでも来てもらえば良いのです。
・今よりも挑戦的で魅力ある仕事が待っていること
・あなたにしか出来ず、どうしても来てほしい
・従業員の家族のためにも頑張りたい。目標があるのだ
と伝えれば、大抵の人材は来てくれます。そしてこちらが言ったことは必ずやります。もちろん年収も現在の1.2倍以上の数値を提案します。会社員は家族のために働いていますから、「家族のため」という言葉に心を掴まれる人が多いようです。
こうして、教えを請うなり会社へ引き抜くなり、年長者の人脈を活かすべきなのです。日本企業で長く働いてきた彼らは、日本で頑張る若者を応援したいと思っているのかもしれません。そんな彼らと武器を構えて戦うのは勿体無いです。
むしろ、若者は年長者に応援してもらって、彼らが培ってきた人脈を活用させて頂く、くらいの方が上手く行くと思います。既得権益を持った側の人間とは上手く付き合っていく。これがベストなやり方ではないかと思います。