起業で会社を潰さないために

起業のアンチパターン

ベンチャー界隈の人なら、心当たる例がいくつかあるかもしれないが起業において、倒産確率を急激に高めるファクターがいくつかある。それは

・株を分かち合う
・株を安易に人に配る
・ひとつのソリューションを作ろうとする

だ。このどれかに当てはまると、99.99%潰れる。ベンチャー界隈に8年以上いるぼくが言うのだから間違いない。


株はなるべく1人で90%以上

まず1つ目「株を仲良く分かち合う」ケースだが、ぼくの経験上、株式を50-50、33-33-33等で仲良く分けた会社は 99.99% 潰れる。

潰れ方のパターンも決まっていて、大抵は不調の時は良いんだけど、事業が上向いて好調になってくると喧嘩になって別れる。喧嘩にはならなくても、大体は「事業貢献度の不公平感」「方向性の違い」とかで別れる。バンドか?

ここ1年でも、僕が近くで見ていたスタートアップ企業がこれで解散した。この手の倒産事例を山ほど見てきたので、はっきり言うと何も考えずに株を分けるやつは気前が良すぎる

分け与える場合は、誰が最後に責任を取るのか?をしっかりと決めておくべき。


株を安易に人に渡すな

創業期の企業において、株とは魂であり命だと思う。最近はVCから出資を受けて、「〇千万円△△から出資受けました!」みたいなプレスリリースを打つのが流行っているらしい。しかも出資比率も全体の 1/3 とか、1/2 とか、ひどい場合だと 100% らしい。

これは例えれば「僕たち魂を3分の1売り渡しました!これから急速成長!」って言ってるのと同じくらいアホなのだ。アンパンマンの顔と違って株は再生しない。

ちなみにPR Timesでプレスリリース打つとき、1回1万円くらいかかる。自分の株を渡して「魂を売り渡しました!」って、全員が全員金かけて広報する。アホなの?

それから、株式3分の1を握られてしまうと、その株主は株主総会で特別決議の拒否権(≒会社の事業の方向性決定権)を持つ。これは思ったより大変なことで、役員を切るときも、ピボットするときも、定款を変更するときも、本社を移転するときも必ずその株主を「いいよ」と言うまで説得する必要がある。僕はスタートアップ界隈に長くいるので知っている。はっきり言ってクソ面倒。

リスクを知ってて、それでも戦略的に出資を受けるってのは素晴らしいことだと思う。公益性が高い事業とか、社長がどうしても雇用でやりたいとか、資本投入でスピードを加速できるとか、初期資本が絶対必要なビジネスとかはそうするべきだ。

だけど、そもそも最初に資本金が必要なビジネスは大部分を「誰かにやってもらう」ビジネスだと思う。IT業界の良さは軽薄短小で1円から始められるところなのに、どうしてその良さを潰してまで、伝統的な「ものづくり」ビジネスで大企業と競争しようとするん…?スモールスタートは起業の大原則なのだ(知ってて破るのは良いですよ)。


基本的に、株は絶対自分で握っておくべきだと僕は思う。なぜなら創業期の株式とは会社の魂であり、命だからだ。自分で 100% 出資した会社と、雇われて経営する会社では真剣さが違う。

自分の会社に 100% 出資するというのは、すべてのリスクを自分で負うということ。学生が最初に作る会社の場合は、大抵はバイトかアフィリエイトで稼いだ金で会社を作ることになる。学生をしながら10万円以上貯めることはすごく大変で、そうやって稼いだ数十万円は、社会人の 1,000万円に値すると僕は思う。

雇われ社長の会社と、100% 自己資本の社長の会社、どちらが成長するかは火を見るよりも明らかだ。しかも、ちゃんと成長しているスタートアップは、はっきり言ってみんなが思っているよりもきつい。多額の売掛金を見ると手が震え、納期遅延の恐れがあればゲロ吐きそうになって、取引先の大企業の機嫌一つで頭が痛くなる。それを、逃げないでやっていきたいという覚悟でやってるのと、失敗したら何度でも出資受けてやり直せばいいやって思ってやるのと、この2つは大きな違いだと思う。

僕は、自分でリスクを取って、技術周りもちゃんと十分に分かっている学生起業家は信用してる。それはちゃんと自分で手を動かした証拠なので。


一つのソリューションを作ろうとするな

株の扱いを間違える奴らは救いようもない。だけど、僕が見てきたスタートアップで一番惜しい間違いは「一つのソリューション(=ぼくの考えた最強アプリ)を作ろうとしてしまう」パターンだ。

根本的な原因は、「ぼくの考えた最強アプリ」の顧客が誰もいないことに尽きる。

僕も大学内で勉強仲間を募るマッチングアプリとか、学生同士で不用品を処分するフリマアプリとか作っていたことがあるから気持ちは分かる。でも、モックを作る前にすべきことは、そのアプリに1円以上課金してくれるユーザを見つけ、契約書にサインさせることだ。

例えば不用品を処分するフリマアプリなら、競合は大学近くのリサイクルショップとか、メルカリになる。めっちゃ競争激しいですよね?僕たちこの人たちと戦って勝てるんですか?そもそも市場規模いくらなんですか・・・?それでバイトせずにそのアプリ開発だけでやって行けるくらい稼げるんですか?

収入ゼロのボランティア活動って続かないです。僕はwiki編集を1ヶ月30円とかでやってたので分かります。低賃金は思ったよりも心を蝕みます。まずは自分の生活を安定させてください。


あとは金を集めるときのコツなんだけど、「○○って製品作ります」って言ってお金を集めるのはやめた方がいい。なぜなら、市場環境が変化しても、思ったより難しいことが分かっても、突撃がやめられないから。勇気をもって「ピボット」を決断できる人ならいいけど、上手く行くパターンを知らない学生は、往々にして損切ができないことが多い。

事業が上手く行くケースは往々にして最初から上手く行くもの。事業の基本は「小さく生んで、大きく育てる」だと思う。

出資を受けるときの資料の正解はふわっと「私たちのミッションは○○なソリューション」とか「この技術を世に広める」とか書くことだ。そのうえで、「こんなアプリを投入。上手く行かなかったらこうする」的なロードマップ、あるいは「こうやってこうすれば成功する確率の方が高い」という道筋を指すのが良い。

失敗するパターンって得てして計画性がない。もしくはリスクを何も考えていない。将軍も軍師も素人なケースが一番危うい。

案件を受注するとき、事前に調べまくって、普通はこうやってこうすれば、90%くらいの確率で上手く行くってのが分かってから受注するよね。それと同じ。上手く行く道筋がないのに、特攻していくのはただの無謀。人生長いので、投資家が納得してくれる失敗の仕方なら良いけど、中には再起不能に陥ってしまう企業も数多く見てきたので、胸が痛むのだ。

先人たちと同じ道を辿らないように願う。

※ 何度も書くことになっているけど、既に顧客がいて、特にアドバイスが必要ないなら自己資本でやるべき。やれば絶対に売れるって分かっていて、他人に分け前をくれてやる必要はない。


おまけ

TDBの本で見た言葉だが、会社を潰す社長には次の特徴があるらしい。

・数字に弱い
・パソコンに弱い
・朝に弱い
・決断力が弱い
・人情に弱い

・計画性がない
・情報がない
・リーダーシップがない
・危機感がない
・人脈がない

僕が見てきた倒産のパターンも、概ね上の10個のどれかに必ず当てはまるような気がする。

学生のうちから会社を興したぼくも、計画性もリーダーシップも、人脈もない可能性がある。そのうち自分の会社も潰れるかもしれないので、人のことばかり言っていられないのだが。

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カテゴリー: 経営

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